第8回
はい、おまたせ。くるりのレビュー、はじめるよ。今回は、おそらくかなりまとまりのない文章になると思います。いつもは多少言いたい事があって、そっから書くから、とりあえずその結論に収束するように書けるんですが、今回はそういうわけにもいかないってことかな、なんせ言いたいことが山ほどあるような作品なんで。
くるりのメジャー3枚目のアルバム、その名も「チームロック」。(この時点でかなりいろいろ思うところがあるんですが、とりあえず置いときます)皆さんも今回は結構耳にしていただいているようで、その前提で書きます。前作〜前々作を知っている人なら分かると思いますが、彼らは今回大きくシフトチェンジしてます。まぁ、分かりやすいのはその音ですが、聴いた感じいろいろあったでしょ。ただ今回おそらく彼らの発明といえる曲はないですね。全ての曲はきっとどこかで耳にした事のあるような感じでしょ?いや、別にパクッテいるとかゆうんじゃなくてね、ただ音楽を結構いろいろ聞いている人が聴けば、おそらくニヤリとするような箇所が結構ありますね。よく言えば「バラエティーに富んでいる」、悪く言えば「統一感がない」ってことかな。僕は一応肯定的な意見の方ですよ。だからね、多分こいつはくるり入門には全く適していない作品じゃないかなと思います。だって彼らの本質が結構暈(ボ)かされてるっていうか、全く無いわけじゃないんだけど、分かりにくくなってるとは思う。
まぁでも最初に驚いたのはね、やっぱりM@「TEAM ROCK」のヘナヘナラップですよ、そこで唄われる内容もね。『いらんいらんもういい、あー全部いらん、ロックチームくるりの抱える苦悩』ときたもんだ。このアルバムが感情の位置でいうと、この地点から始まるのはもう明確です。非常に分かりやすい。さて、ここでくるりが今までのアルバムで唄ってきたことを振り返ってみる。彼らがこれまでに一貫して唄ってきたことは、「自分と他人(ボクとキミ)とのどうしたって埋まる事のない距離」だったと思う。それは今回も同じ。1st「さよならストレンジャー」では、そのタイトルのとおり、悲しみと共にストレンジャーに別れを告げてしまう、2nd「図鑑」ではそのベクトルは「怒り」の方向へ振り切っている。これまで彼らは悲しみや怒りに感情を振り切ってきた。しかしこのアルバムでは冒頭の曲でも唄われるように、臨界点まで達したにもかかわらず分かり合えない、そんなリアルに愛想をつかしたチームくるりがいる。今まで感情を爆発させてただ1人暴走機関と化していたVo.岸田はここにはいない。ただ愛するあらゆる音楽を平熱のまま唄う岸田がいる。もうなにも叫ばない。悟りか、諦めか、とにかく次々に鳴らされるカラフルな音達が感情の起伏を押さえ込むためにあるかのように感じた。とにかくこのアルバムのはじまりはそういった立ち位置からのスタートだったんでしょう。
いろんな曲がありますから、とりあえず順を追って。MA「ワンゲル」。実はこいつだけなんかアルバムの中で浮いてるね。いい曲だし、結構売れたし、でもこの曲でくるりはじめて買おうって思って買った人は、多分もう聞いてないような気がする、こいつはキャッチーでポップで楽しいから。唄われる内容は結構悲しいんですけど。なんか音もいまいち良くないしね。MB「LV30」マイブラまんまですかね、結構好きです。詞の内容結構ヘビーですね。MC「愛なき世界」ここで個人的に重要な一節『君は歌う、安心を買ったって、俺も欲しい心から』、俺ここでもニヤリ、これ唄ったのスーパーカー、「FAIRWAY」でこう唄う、『安心を買った、どうしてか心を売って買った気がしてたら、安心はどこか退屈と似てた、そんな何故に撃たれていた』 うーん秀逸な歌詞ですね。岸田っていつもスーパーカーに影響受けまくりですからね、こんな所でリンクしてます。さぁここまでで前半終了中盤のクライマックスはこの後MD「カモンカモン」〜ME「カレーの歌」〜MG「永遠」この流れ最高です。簡単に言っちゃえばMDはダフトパンク、MEはカントリーロード、MFは快感ブレイクビーツ。でもこういう事をするのが彼らの今回の重要なテーマだったのかななんて思います。MFとか刻まれていくくるり独特のブレイクビーツは特にお気に入りです。DとFの曲飛ばす人はこのアルバムの半分しか楽しめてない人かもしれないね。MG「トレイン・ロック・フェスティバル」ブルースハープ全開のロックチューン、このあたりからこのアルバムは新しい局面に移行する。中盤を経過する過程によって何かが変わったのだろうか、1stで分かれたはずのストレンジャーを探し始めている、『ディスコードママママイレボリューション、NO.9イエイ』とか言ってるし。MHシングル「ばらの花」、ここでのバックコーラスは、スーパーカーのMIKI、ここでも出てきたスパカとのリンク、MC「愛なき世界」ともリンク。「安心な僕らは旅に出ようぜ」。でもこの曲かなり不安な感覚にさせられる、このリアリズム泣けますね。でもどうでしょう、彼らは明らかに次のフェーズへと突入し始めようとしているではないですか。MI「迷路ゲーム」、はっぴぃえんどか財津和夫かってそんな感じですかね。この辺結構クライマックスに来てますが、本当のクライマックスはMJ「リバー」もうこれに尽きる。このアルバムは他者とのすれ違いに愛想をつかしたM@のくるりがチームとして音楽を作ることによってこの曲へと到達する、いわばロードムービー的作品だったんですね。ドキュメンタリーですね、ロックチームくるりがここまで来るための。「リバー」のイントロ、ストーンローゼスですね(またニヤリです)。バンジョーとか入ってカントリーですね。そのサビ歌詞とかもいいね。『you take me higher 俺祈ってら、たいがいな欲望持ちつづけたまま、滑るんだ、ニアミスするんだ、遠くまで連れて行きたいのに』多分このあたり、結構今回のアルバムが集約された部分かなと思いました。この思いを胸にきっと彼らは次へ行く、不安と欲望を持ちつつ歩きつづけるんだろう、それがどこへ向かうか答えもないままに。
っとまぁ僕の感じた内容はこんな感じですかね。だから今回はおそらく、歴史的名盤とか、これぞくるりとか、そんなアルバムじゃないと思う。ただすごく重要でいいアルバムだとは思います。「図鑑」というとんでもない名盤を怒りに任せて産み落としたチームくるりは、次の旅に出るために自分達の本質を見つめなおしたんじゃないでしょうか。その為にはギターもベースもドラムも、そんなロックな各パートは捨てさり、枠をなくしてデジタルからアナログまでの大好きな音をみんなで鳴らした結果、「リバー」へ、そして次の場所へ進む準備が整ったんだと、そういう作品ではないかと思います。なんか、伝えたかった事が伝えきれたかよく分かりませんが、多分これを踏まえて聴いてくれると、また別の聞き方もできるかなぁなんて、あくまで僕なりの解釈ですから、気にせず「ワンゲル」で踊り狂ってください、そんでジンジャーエールでも飲んでください。
みんな、「カレーの歌」がカントリーロードまんまじゃんとか言ってあげないでね、くるりな歌詞がいいでしょ、たぶん彼ら流の和訳カバーということでね、基本的には「有り」ですよね。
”さようなら愛してる、これからもきっと、忘れない?忘れるよ、これからもずっと、カレーの香りは君と同じで、やさしくて小さくて、忘れてしまいそう” ME「カレーの歌」より